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苦手分野がある先生へ

苦手分野の克服は、そもそも必要なことなのか?


だれしも得意分野があれば、コインの裏表のごとく不得意分野があるものです。
若手の歯科医師の先生方を見ていて思うことがあります。
それは多くの先生方が苦手分野を克服しようと必死に努力されているということ。
素晴らしいことだと思いますが、同時にもったいないなとも思っています。
というのも、苦手分野を克服することは容易ではなく、それにそもそもそれは必要なことなのか、本当に考えて頂きたいと思うからです。

 

私たち歯科医師は多くの臨床科目を、歯学部生活6年間(あるいはそれ以上の期間)学んで歯科医師となります。そして、その学んだ診療科目の多くを臨床の場で実践しようと日々努力しているのです。

しかし医科はどうでしょうか。

医師の多くは臨床医としてそれぞれの専門分野に特化して日々の診療を行っていることが大半だと思います。

例えば、眼科、耳鼻科、内科、外科を同時に標榜し、標榜する科を受診する全ての患者さん全員を一人で診察する医師というのは、いなくはないかもしれませんが、令和の今日、離島や特別な環境下でなければかなり少数派ではないでしょうか?

医師の大半は医学部6年間で学んだ多くの臨床科目の中から、自らの専門分野を卒後は臨床医として深く狭く掘り下げていく傾向にあります。その方が効率的であり、より多くの患者さんを診ることができ、そして誤診も少なく、結果的に医療の質的向上に直結するからです。結果的に日々のストレスも少なく、名医だと患者さんからも慕われ、富と名声はもちろんのこと、自らの医師としての在り方すべてにプラスに作用するからです。

 

対して歯科医師は、先ほどお話したようにオールラウンダーを目指す傾向にあります。

オールラウンダーとは「なんでもできる人」「他領域で能力を発揮する人」ということですが、これは現在の医科のトレンドとは真逆です。レオナルド・ダ・ヴィンチのような天才はそうそういるものではないと思います。かくいう私もまったくの凡人です。
ではなぜ歯科ではそのようにしてオールラウンダーを多くの先生方が目指してしまうのか。

その答えは、歯科医院に受診する患者さんが、歯科にも専門分野があり、補綴、保存、歯周外科、口腔外科、小児歯科など高度な専門性を求められる診療科であるということを知らないつまりは経済用語で言うところの情報の非対称性があるからなのです。

情報の非対称性とは「売り手」と「買い手」の間で一方が他方よりもより多くの情報をもっており、取引において対等な関係をつくれないことを言います。

 

歯科においては当然ながら、我々歯科医師は高度な専門知識を有しており、また歯科医師である私たちは、自分自身は歯科医師として義歯が得意なのか、抜歯が不得意なのか、あるいはどの程度臨床的な技術研鑽を積んでいるのかなどの臨床スキルに関する一方的な情報を有しており、医療法による広告規制などもあり、それを患者さんは知ることが難しい・・・これらのことから情報の非対称性が高い分野であると思います。
結果的に平均的な歯科医院には、おおよそ一日15人~40人程度の患者さんが集まり、その内訳は歯髄処置が必要な人が3~5人、デンチャーの患者さんが3~5人、インレーやCR重点による保存修復が必要な患者さんが数人、小児の患者さんが数人、口腔外科処置が必要な患者さんも数人、歯周炎の患者さんが5人程度とバラバラに集まり、専門分野に特化して診療するには十分な患者さんが集められないため、歯科医師として開業して生活を維持していく上では、オールラウンドに診察する以外に選択肢がない。
ただそれだけの理由なのです。

 

もし、患者さんが歯科も医科のように、それぞれに専門の先生がいて、得意不得意があり、それぞれの疾患や症状に応じて受診する診療科が分かれていることの周知が広がれば、やがては患者さんも受診する医療機関をある程度選択するようになっていくことが予想されます。

親知らずが痛み出したのなら、それを得意とする口腔外科専門の先生を探して、多少物理的距離が離れていても受診する、あるいは義歯に特化した先生がいるのであれば、補綴専門の先生に診てもらう、子供は小児歯科に連れていく、という流れが今後の情報化社会のなかでより加速することは疑いの余地がなく、ビジネスの世界では情報の非対称性は是正されるトレンドにあることから、この流れが加速することは火を見るよりも明らかだと思います。

 

得意を伸ばしていくことで、
将来の歯科ニーズに的確に応えるという選択ができる
数少ない医療法人

このようにして歯科を取り巻く環境は変化を続けています。そのなかで、医療法人光惠会では、不得意分野を克服し、オールラウンダーを目指すよりも、むしろ現在先生の得意とする分野に特化し、それをより伸ばしていくことで将来の歯科ニーズに的確に応えるという選択ができる数少ない医療法人であると自負しています。

 

それを実現するためには、どうしても患者さんの数が必要です。「規模」がなければ今はまだ実現できないことなのです。そして私たちは「売り手」と「買い手」の情報の非対称性を埋めるべく患者さんに対して積極的な情報発信に取り組んでいます。

それは先ほどお話したように、歯科にもそれぞれの先生ごとに得意とする専門分野があり、専門分野に必要とされる診療機器や設備が必要だという情報の発信です。

医科のトレンドに話を戻しますが、何かあったときに一患者として、小さな個人のクリニックを受診しますか?大きな総合病院を受診するという人が多いのではないでしょうか?

 

これは何も医科の世界だけの話ではありません。

例えば小売りの世界では今やスーパー1人勝ちとなり、個人経営の八百屋さんや鮮魚店、青果店というのはその数を年々減らしています。
このことからも今後は歯科においても、より規模の大きい、専門分野に特化した診療を受けることが出来る医療機関へ患者さんが自ら情報の非対称性のギャップを埋めることで受診を加速させていくことが予想されます。

 

医療法人光惠会は10年後、20年後、30年後の歯科を取り巻くトレンドを見据えつつ、未来に活躍する歯科医師としての働き方を模索し続けています。

不得意分野の克服よりも得意分野を伸ばすことに意義を感じていただけた先生、ぜひ当法人にいらしてください。私たちは歯科医師としてより未来を見据えた診療に取り組んでいます。より患者さんのことを考えた診療を行っています。そしてなによりも先生ひとりひとりがより充実した歯科医師として社会で活躍できるようにシステムを作っています。